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2013年9月1日を表示

奇跡があふれている

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もうひとつ、このころの木村さんに起きた奇跡を紹介しよう。

無農薬栽培を始めた木村さんを悩ませたのは経済的な苦境である。子どもたちの学校の給食費もはらえず、食卓には雑草の料理が並ぶという状態だったことはすでに述べた。

さらに税金も払えず、家財や畑は差し押さえの対象になり2反あった田んぼも手放さざるを得なくなった。実家に借金をしたり、アルバイトで細々と食いつないでいたのである。

木村さんは、お金を手当てするあてもなくなり、地元の銀行へお金を借りに行った。

「私、お金がないので、はらえるかどうかわかりませんが、お金を貸してください。」

こんな借金の申し込みで貸してくれるところなど、どこにもないだろう。しかし、担当者はそれでも話を聞いてくれた。

「あなたは何をやっているのですか?」「こういう栽培をやっているんです。」と、木村さんは自分のやっていることを説明した。

「私ならすぐにやめます。暮らせないほどのことをやる必要はないでしょう。せっかくお越しくださったので受け付けだけはします。判断は上司に任せます。」
そういって、奥へ下がっていったのである。

さて、どうなったか。なんと、上司のOKが出たのである。200万円だった。木村さんは、これを親戚や知人からの借金の返済にあてた。

しかし、借りたお金は、期限がくれば返さなければならない。

また、借金である。親戚や知人に頭を下げ、やっとかき集めた200万円。木村さんは、返済日にこれを銀行へ持っていった。そしたら、支店長からこんなことをいわれたのである。

「期日を守ってくれただけで十分です。このお金はこのまま持ち帰ってみんなに返しなさい。10年たったら見通しがつくだろう。そのときにはきちんと返してもらうから」

こんなことがあり得るだろうか。個人からお金を借りたわけではないのだ。相手は銀行である。まして、返すあてをもっていない人なのだから、貸すだけでも大変な覚悟だ。返済にきたら、不良債権にならなくてもうけものとばかり、さっさと受け取るのが普通の感覚だろうと思う。


なぜ、このような展開になったのか?

私は、木村さんの話を聞いて、わが耳を疑った。そんなバカな・・・。私にとっては、目の前に宇宙人が現れる話よりもはるかに衝撃的だった。

木村さんは、当時をなつかしむようにこういった。

「後でわかったんだけど、支店長が借金を肩代わりしてくれていたのな」

木村さんが借金を申し込むまで一面識もない支店長である。昔、何か世話になった恩返しという話ではないのだ。支店長は、自分の給料の一部を木村さんの借金の返済にあて、退職するときには、残りを退職金できれいにしていったというのである。

なぜ、その支店長はそこまでしようと思ったのか。後で木村さんが知ったのは、彼は、弘前大学農学部の卒業生で、大学に在学していたころに リンゴの研究をしていたということだった。

そして、さらに驚くことに、研究を続けていくうちに、どうしてリンゴ栽培にはこれほど農薬が必要なのかと疑問をもち、無農薬でのリンゴ栽培は不可能なのかということに視点が向かっていったのだった。



担保はその人の思い。思いを買ってくれた支店長から教わったことだ。その支店長は、今の木村さんの活躍を見ることなく鬼籍に入られた。



「渡る世間は鬼ばかりっていうけど、それは 自分が鬼だから。
まじめなことをしていれば必ず通じる。決してあきらめてはいけないな。

昭和元年に生まれたおふくろがよく言っていた。みんなが無農薬なんてやめろって言っていたときのことだけどな。1回しかない一生、好きなことやればいいじゃないかって。おふくろがでっかく見えたな。

おふくろもそうだし、支店長もそうだし、家族もそうだし、いろんな人が力を貸してくれてリンゴができた。だから、私は恩返しをしないといけないと思っているわけよ。みんな、自分の体を考えたほうがいいよって言ってくれるけど、できるだけのことはやりたいから、こうやって走り回っているのな」

ちょっとだけしんみりとした口調になった。



「木村さんのリンゴ  奇跡のひみつ」  小原田泰久著 (P61~64)

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この本には 木村さんには奇跡があふれていることの秘密が書かれていました。

本を読み終わったあと、ありがとうございました。と 本に言いました。
(^.^)



9月1日(日)06:11 | トラックバック(0) | コメント(0) | 家庭菜園 | 管理


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