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2016年6月30日を表示

りんのショートストーリー

ミス白雪姫 [名作パロディー]

白雪学園高等部では、毎年恒例の『ミス白雪姫コンテスト』を迎えようとしている。
目下2連覇の白雪姫子は、3年生の生徒会長。
美人で頭がよく、しかも理事長の孫娘であった。
「今年もわたくしがミスの座を射止めますわ」

姫子は鏡を見ながらいつも問いかける。
「この学園で、いちばん美しいのは誰かしら?」
「はい、もちろん姫子さんです」
鏡が答えるわけはなく、取り巻きの生徒会役員が代わりに答えるのである。

そんなある日、姫子が廊下を歩いていると、
「小雪ちゃん、めっちゃ可愛いよな」
「見つめられただけでメロメロだよ」
と話す男子学生に遭遇した。
「ちょっとあなたたち、小雪って誰ですの?」
「1-Eに編入してきた白浜小雪だよ。色が白くて目が大きくて、唇がふっくらで超カワイイ!」
これはうかうかしていられないと、姫子は1-Eの教室に向かった。

「ちょっと、白浜小雪さんってどなたかしら」
ざわめく教室で、ひときわ輝く美少女が立ち上がった。
「生徒会長どの。拙者が白浜小雪でござる。以後お見知りおきを」
小雪は、時代劇で日本語を学んでいる帰国子女であった。
「変わった方ね。まあいいわ。あなた、ミス白雪姫コンテストに出場する気はあって?」
「何でっか?白雪姫コンテストゆうのは」
小雪は、上方落語でも日本語を学んでいた。
「学園一の美女を決めるコンテストですわ」
「そんなもん出るかいな。興味あらへんわ」
「あらそう」
「だいたい女性をランク付けするなんざ、許せねえ。たとえお天道様が許しても、この白浜小雪が許さねえ」
「つくづく変わったお方」

姫子が背を向けると、クラス中の女子が呼び止めた。
「生徒会長、小雪ちゃんの言うことはもっともです。どうして女性だけをランク付けするんですか?」
「それなら男子もやりましょうよ。ミスタープリンスコンテストなんてどうですか?」
「あ、それいい。ミス白雪姫とミスタープリンスはカップルになって壇上でキスするの」
「キャー、それ素敵。やりましょう、生徒会長」

ミスタープリンス?
姫子は考えた。ミスタープリンスといえば、間違いなく2-Aの王子君だ。
王子君と壇上でキス?胸キュンの少女漫画みたいだ。
「やりましょう」

ということで、今年はミス白雪姫とミスタープリンスコンテストが行われることになった。
姫子は立候補。小雪は多くの推薦を受けて出場することになった。
「本場ベルギーのチョコレートよ。さあ召し上がれ。これを食べた方は、白雪姫子に投票なさってね」
姫子が着々と根回しをする中、小雪は何もしなかった。
相変わらず時代劇と上方落語で日本語を学ぶ毎日であった。

コンテスト当日、思った以上に小雪が優勢であることを知った姫子は、取り巻きたちに命令して、小雪を初等部の体育倉庫に閉じ込めた。
会場にいなければ棄権とみなされるからだ。
「てめえら、こんなことしてただで済むと思うなよ。叩き切ってやる!」
どんなに叫んでも、外から鍵をかけられて開けることが出来ない。

一方、ミスタープリンス間違いなしの王子君は、日課であるジョギングをしていた。
彼はサッカー部のエースなので、日々体を鍛えているのである。
初等部の前を走っていると、7人の小学生が体育倉庫の前で困っていた。
「君たちどうしたんだい?」
「あのね、この倉庫の中に誰かいるみたいなの。だけど鍵がなくて開けられないの」
「職員室にも鍵がないんだ。だからね、僕たち石で鍵を壊そうとしていたの」
「ふーん。南京錠か。よし、おにいさんが壊してあげよう。子供じゃ無理だよ」
王子君は大きな石を振り下ろして鍵を壊した。
中には、泣き疲れた小雪がマットの上で寝ていた。
「お姫様みたい」「めっちゃきれいな人」
「この人、1年の白浜さんだ。たしかコンテストに出ていたな」
王子君はようやく、コンテストのことを思い出した。そうだ、俺も出ていたんだ。

コンテスト会場では、投票が終わり、発表が始まった。
「ミスタープリンスは、圧倒的な得票数で、2-Aの王子君です」
「すみません。王子君はトレーニング中です。もうすぐきます」
姫子が「もう少し待ってあげて」と言ったものだから、しばらく中断となった。

「遅くなりました」
爽やかな笑顔で王子君が走ってきた。
その後ろにぴったりと寄り添う白浜小雪。手までつないでいる。
「あ、ちょうどよかった。改めて発表します。ミスタープリンスの王子君、そして、ミス白雪姫の小雪ちゃんです」
拍手喝采で迎えられたふたりに、姫子の怒りはマックスになった。
「何よ、遅れてきたくせに。無効だわ」
手を振りあげた瞬間、体育倉庫の鍵が落ちた。
すべての悪事がばれた姫子は、祖父である理事長に、こっぴどく叱られることになる。

「さあ、ミスとミスター、壇上でキスを」
「あっ、おれ、もうしちゃった」
「え?」
「寝顔があまりにも可愛かったから」
まさに王子様のキスで目覚めた白雪姫だ。

「白浜小雪さん、ひとことお願いします」
「ごっつあんです」
相撲でも日本語を学んでいる小雪であった。

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6月30日(木)04:55 | トラックバック(0) | コメント(0) | りんのショートストーリーより | 管理


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