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2014年12月22日を表示

りんのショートストーリーより

ペンギンデート [男と女ストーリー]


あの日と同じような服を選んだ。黒いコートに白いマフラー。
服装は同じでも、体型はあの頃とは似ても似つかない。
すっかり年をとってしまった。

「50年後に、ペンギンの前で逢いましょう」
なんて不確かな、なんて頼りない約束だろう。50年前、気が遠くなるような約束をした佐伯が来る気配はない。
動物園の閉園時間が近づき、冷たい風が通り過ぎた。

佐伯は、夫の同僚だった。
親の勧めで結婚した夫は、無口で思いやりに欠ける人だった。
飲み会の後はいつも同僚を連れてきて、酒やつまみを用意させられた。
新婚生活は苦痛の方が多く感じた。

そんな私に、唯一優しく接してくれたのが佐伯だった。佐伯はいつも私を気遣ってくれた。
台所に顔を出しては、「いつもすみません。料理を運びましょう」と手伝ってくれた。
「男が台所に入るものじゃないわ」と言うと、「奥さん古いなあ。これからは女性の時代ですよ」とさわやかに笑った。
おそらくこのとき、不覚にも私は恋に落ちたのだと思う。
佐伯が来るのを心待ちにしている自分に戸惑い、必死に否定してみたけれど想いは募るばかりだった。
もちろん誰にも知られてはいけない秘密の想いだ。
胸の奥に閉じ込めて決して開けてはいけない。
そんな日々が半年ほど続いた。佐伯はいつも優しかった。
後片付けを手伝ってくれたり、酔いつぶれた夫を布団に運んでくれた。
そのあとは、酔い覚ましのコーヒーを飲みながら楽しいおしゃべり。
その時間は、私にとって宝物だった。

しかしそんな輝く時間は、ある日突然消えた。佐伯が東京を離れることになったのだ。
「九州へ転勤になったそうだ。自分から志願したらしい」
夫の言葉に、私は動揺した。
「どうして? 佐伯さん、実家も関東なのに」
「さあ、東京を離れたい理由があるんだろう」
何かを含んだような言い方だった。夫は気づいているのか。
それならば、佐伯も私の気持ちを知って離れて行くのか。
胸が苦しくなり、気づけば「外で会ってほしい」と佐伯に電話をしていた。

私たちが一度だけデートをしたのは、真冬の動物園だった。
ひどく寒い日で、私たちは言葉を探しながら、少し離れて歩いた。
佐伯は、ペンギンの前で立ち止まった。
「あなたはまるでペンギンのようですね。黒いコートに白いマフラー。あそこでじっとしているペンギンとそっくりですよ」
「あらいやだ。私、あんなずんぐりじゃないわ」
私たちは笑いながら、少しだけ寄り添った。
「僕はこの先誰かと出会い、いつか結婚するでしょう。そしてあなたは、子供を産んで母になり、素敵に年をとっていくでしょう」
「ええ、そうね」

「50年後に逢いませんか」
唐突に佐伯が言った。
「50年後? 私ずいぶんなおばあさんだわ」
「僕だっておじいさんだ。でも、そのころになれば、もう逢ってもかまわないでしょう」
穏やかな遠い目をしていた。
「いい茶飲み友達になれそうね」
「では、50年後の今日、ペンギンの前で」
佐伯はそう言って、軽く手を振った。それが彼との別れだった。
冗談みたいな儚い約束を残して、佐伯は駅へと走り去った。

佐伯が言ったように、私はやがて母になり、思いのほか子煩悩な夫と穏やかに暮らした。
平凡だけど幸せな日々に、佐伯のことも思い出さなくなっていた。
年をとって、子供が巣立ち、夫を看取った。ひとりになると、なぜだか佐伯のことを思い出した。
もう恋ではない。ただ懐かしい思い出として、私は佐伯に想いを馳せた。
そしてあの頼りない約束を思い出した。

ペンギンは、どこを見ているのだろう。遠い故郷の夢を見ているのだろうか。
寒さをこらえながら思い出に浸っている私は、本当にペンギンみたいだと、ひとりで笑った。
ふと気配を感じて振り返ると、佐伯が立っていた。
「遅くなりました」と微笑む佐伯は、あの頃のままだ。あの時と同じ服装で、同じ顔で、何も変わっていない。
「ずるいわね。あなただけ若くて」
「すみません。でも、あなたが幸せそうでよかった。ふくよかになられて、幸せな証拠だ」
「まあ、いやな人。ますますペンギンみたいって言いたいんでしょう」 
佐伯は優しく笑った。そして静かに消えた。

本当は知っていた。佐伯はおじいさんにはならなかったこと。
彼は九州に転勤した2年後に病に倒れ、そのまま逝ってしまった。
「茶飲み友達になれなかったわ」
閉園を告げる音楽が、北風に乗って聞こえてきた。
冷え切った体をさすって、のろのろと歩き出す。
明日は夫の墓参りでもしようかと、何となく思った。

*****

公募ガイド「小説虎の穴」で佳作をいただいた作品です。
今回のテーマは、「老人が主人公の話」です。
この作品、自分ではとても気に入っています。

http://rin-ohanasi.blog.so-net.ne.jp/2014-12-11



12月22日(月)05:31 | トラックバック(0) | コメント(0) | 地球さんが好き | 管理

洗心

2014/12/17
「祈る。」  未来概念

具体的にどうすればいいのか?


地球学の社会ですら

有用知識を精査し

眼前の現実と照らし合わせ

些かのインスピレーションで

遂行断行せねば局面は変えられない。


その地球学を卒業するとなれば

どうすべきかは一目瞭然であろう。


地球学の大前提そのものを

吟味精査し

見える現実と

見えないインスピレーション次元(層)と

の本源整合性(これが重要)を

観極め続けること(これも重要)である。


すべての情報波は

大クラインそのものに包括されており

その情報波取得の鍵は

個々一人ひとりの「8×8」の

固有振動波層にあるのである。


大宇宙は

個々一人ひとりの

目醒めを希求し続けている。


地球人各位のご健闘を祈りたい。


http://wave.ap.teacup.com/applet/1286/msgcate7/archive



12月22日(月)05:06 | トラックバック(0) | コメント(0) | 地球さんが好き | 管理


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