昨日の敵は今日の友 |
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| 「天霧」は、とにかく猛烈な訓練で有名な船で、歴戦連勝、大東亜戦争の多くの海戦に参加し、その中を堂々生き延びた駆逐艦です。 花見艦長も乗組員も、艦に対する絶対の信頼を寄せていた。
敵が魚雷艇であり、すでに距離が近すぎて艦の砲撃が間に合わない。しかも敵は小さい。 もし、敵魚雷艇が「天霧」の砲撃可能距離に到達する前に、魚雷を装填し発射したら、至近距離からの魚雷攻撃を避けることは不可能です。 間違いなく「天霧」は大破もしくは轟沈するし、無傷となった敵魚雷艇は、反転して味方輸送船団をほしいままに攻撃することができる。
どんなことをしても、その場で敵魚雷艇をやっつけなければなりません。 そのためには、艦と魚雷艇の距離が至近距離にある、その瞬間に敵を踏みつぶすしかない。
これは、大博打です。 万一、魚雷が爆発したら、その危険と被害はたいへんなものとなります。 艦と乗員のすべてを失う
しかし博打というなら、戦いそのものが大博打です。
艦と猛烈な訓練を施してきた乗組員全員の命を一手に預かり、花見艦長は、その瞬間、踏みつぶすことを選択した。
そして彼は、博打に勝ちます。
魚雷艇は、衝突の衝撃でガソリンタンクに引火し、大爆発を起こします。 閃光をみて、僚艦は、「天霧」がやられたと思い、ただちに「状況知らせ」の無電を打っている。 それほどまでに緊迫した衝突事件だったし、爆発の衝撃も大きなものだった。
「天霧」は、衝突現場海上を確認しますが、大爆発後であり、生存者なし、と確認。そのまま帰国の途についています。
この点で、「天霧」を薄情だと問うことはできません。 もし、生存者が確認されれば、帝国海軍は、必ず救助をしている。
実はこの事故のとき、米国魚雷艇は、他にも2隻いたのです。 要するに、3隻で、哨戒任務にあたっていた。 そのなかの衝突轟沈した1隻が、後年アメリカ大統領になるケネディが指揮する艇でした。
ところが豪雨の中から、いきなりニュッと現れた日本の駆逐艦隊に惧れをなし、ケネディ艇以外の2隻は、敵から発見されない豪雨の奥に、すぐに逃げ出しています。
ところが、このときケネディ艇だけが、なぜかまっしぐらに「天霧」に向かっていき、爆発しています。
逃げた2隻も、その大爆発を見て、ケネディ艇は全員即死と判断。 艇を帰投させ、基地では、翌日、ケネディたちPT-109魚雷艇乗組員全員の追悼式を行っています。
それだけひどい大爆発だったのです。
ところが後年、全米の大統領にまでなる人物というのは、運が強いものです。 ケネディ少尉は、このとき真二つになった艇の片方に乗っていたのだけれど、その半分も、すぐに沈み、13人の乗員のうち、2名が死亡したけれど、ケネディを含む残り11名は、艇の残骸にしがみついて、海に漂っていたのです。
そしてケネディは、負傷者を命綱で結びつけ、その綱を咥えて全員を励ましながら、ほぼ5時聞かけて約5キロを泳ぎ、近くの小島にたどり着いた。
ところが、この小島の位置は、どうみても味方の航路から外れている。
そこでケネディは、ひとりで別の島まで泳いで渡ります。 彼はハーバード大学時代、水泳の選手だったのです。泳ぎには自信があった。
島で椰子の実を食べながら5日目、友軍の救助を得るためには、もっと基地に近づかなければならないと、さらに別の島まで泳いで渡ったケネディの前に、ひとりの島の原住民が現れます。
そこでケネディは、落ちていた椰子の殻にナイフで、 「11名生存、場所はこの原住民が知っている、ケネディ」と刻んで、原住民に手真似で頼んだ。
原住民は、それを理解したのか、カヌーで去って行きます。 その場で死んだように眠っているケネディの前に、ふたたびその原住民が現れます。
彼は、ニュージーランド軍哨戒部隊の隊長からの手紙を持っていた。
こうしてケネディとその一行は、全員、無事に救助されます。 艇が沈んで、7日目のことだったそうです。
ケネディは、自分も衝突の瞬間にしたたかに腰を打ちつけ、大怪我を負っていたにも関わらず、部下を見捨てることなく、痛みを抱えながら、部下を島に落ち着け、自身は島から島への渡って、救助を得るための努力をしました。
彼の勇敢な行動は、ハルゼー海軍提督からの感謝状、名誉負傷章、海軍メダルおよび海兵隊メダルの受章となります。
冒頭に書いた、椰子の実は、このときの椰子の実です。
その椰子の実は、ケネディが暗殺されるその日まで、ホワイトハウスの彼の執務室に置かれていたそうです。
昭和26年秋、下院議員として来日したケネディは、出迎えの国連協会の細野軍治氏に、「私の艇を沈めた駆逐艦長に、ぜひ会いたい」と申し出ます。
このとき花見弘平艦長は、大東亜戦争を生き延び、福島県に住んでいました。 ケネディはその翌日には日本を離れなければならない。 ケネディは心を残して、機上の人となった。
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3月4日(日)07:32 | トラックバック(0) | コメント(0) | 社会 | 管理
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