未来の怪談 |
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| サダコ2号 [コメディー] http://rin-ohanasi.blog.so-net.ne.jp/2016-06-04
「充電シテクダサイ、充電シテクダサイ」 ええ?もう電池切れ?バッテリーが弱っているのかしら。 お料理の途中なのに困ったわね。料理を作り終えてからにしてほしかったわ。
家政婦ロボットの『サダコ2号』は、結婚した時に嫁入り道具で母が持たせてくれたもの。 当時は最新型で、料理のレパートリーの多さに目を見張った。 掃除も洗濯も完璧だったのに、最近はどうも動きが鈍くなってきたみたい。 10年も経っているんだから仕方ない。
サダコ2号を充電しながら、思わずため息。 この10年、いろいろあったな。 子供が生まれて、育児ロボットをレンタルしたら、姑に嫌味言われたな。 「育児をロボットにやらせるなんて、まあ今どきのママは楽でいいわねえ」 平成生まれは頭がかたいわね。なかっただけでしょ、ロボットが。
結婚7年目、夫の浮気が発覚。 「彼女の料理が美味しくて、胃袋つかまれちゃった」だってさ。 なによ、最新型の家政婦ロボ「マリア5号」が作る料理よ。 洋食が好きなら言いなさいよ。 結局離婚したわ。夫はサダコよりマリアを選んだ。 それだけのことよ。
「ママ、おなかすいた」 「あらジュリちゃん、今サダコ充電中なのよ。もう少し待ってね」 「また充電?もう新しいの買ったら?」 「そうなんだけどね、10年も使っていると愛着が…」 「この前、本棚に食パンが入ってたよ」 「あら、そういえば電子レンジに靴下が入っていたことがあるわ」 「もう寿命だよ」 「でもねえ…」
「ママ、サダコから煙が出てる!」 「まあ大変。サダコ、大丈夫?」 サダコはショート寸前で、途切れ途切れの言葉を発した。 「オク…サマ…、モウ限界デス…。今マデオ世話ニナリマシタ」 「サダコ!」 10年もわたしを助けてくれたサダコ。お礼を言うのはわたしの方よ。 ありがとう、ありがとう。
サダコと涙のお別れをした翌日、新しいロボットが届いた。 「奥さん、実に運がいい。なかなか手に入らない最新型ロボットが手に入りましたよ。その名も『主夫ロボット蒼汰1号』です。 「あら、カッコいい」「すごいイケメン」
蒼汰は、仕事はちょっと雑だけど、見ているだけでキュンキュンするの。 「あたし友達に自慢しよう」 「一緒にショッピングに連れて行こうかしら」 「よかったね。サダコがちょうどいいタイミングで壊れてくれて」 「そうね。サダコは、仕事は完璧だったけど、見た目が地味で暗かったもんね」 「それに比べて蒼汰は超さわやか」 「ジュリちゃん、なんだか最近おしゃれじゃない?その服、よそ行きでしょ」 「ママこそ化粧が濃くない?」 「ああ、本当によかった。サダコが壊れてくれて」
「あれ?ママ、テレビのモニターが急に暗くなったよ」 「まあ、買ったばかりの15Kテレビなのに」 「あ、なんか映った」 「…なに?井戸?」 「なんか出てきた。長い髪に白いエプロンドレス。こっちに来るよ」
「……サダコ」
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Jun.8(Wed)05:58 | Trackback(0) | Comment(0) | りんのショートストーリーより | Admin
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