りんのショートストーリーより |
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| http://rin-ohanasi.blog.so-net.ne.jp/2016-03-21
桃色ノ空 [ファンタジー]
桃の花がきれいに咲いたわ。 お空の上から見えるかしら。
毎年3月になると、桃の木の下に集まって、お弁当を広げた級友たち。 ひとり減り、ふたり減り、そしてとうとう、みんな空へ行っちゃったの。 「逢いたい」と手紙を書いて、桃の枝にくくりつけた。
わたしから逢いに行くことは出来ないの。 だって可愛いひ孫も生まれたし、犬のマリリンもいるんだもの。 だからね、出来ることならそちらから、逢いに来てはくれないかしら。
翌朝のこと、マリリンとお散歩に出たら、枝の手紙が消えていたの。 あら、もしかして、お空に届いたのかしら。
マリリンが珍しくワンワン吠えた。 見ると、桃の木の下で4人の級友が手を振っていた。
「おハナちゃん、早くいらっしゃい」 「あらみんな、やっぱり逢いに来てくれたのね」 昔みたいに5人そろって、桃の花を見上げたの。 「美しいわ」 「なんて素敵な青空かしら」
わたしたちは、いつの間にか少女になって、コロコロと笑った。 笑い声は雲になって、いつまでも浮かんでいたわ。 ああ、楽しい。
「……おばあちゃん、おばあちゃん」 肩をゆすられて目を開けたら、心配そうな孫の顔。
「帰りが遅いから迎えに来たの。こんなところで寝たら風邪ひくわ」 ああ、夢だったのね。楽しい夢だったわ。
木の枝には、手紙があった。空に届くわけがないわよね。 だけどちょっと不思議。私がくくりつけた枝と、違う場所にそれはあった。 背伸びして手紙を取って開けてみた。
『また来年あいましょう』
あら、まあ。 見上げた空は、桃色の空。 ピンクの頬の級友たちが、雲の上で笑ってた。
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3月29日(火)07:27 | トラックバック(0) | コメント(0) | りんのショートストーリーより | 管理
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